凡典堂

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【漫画】夏子の酒 1

夏子の酒

作品紹介

新潟県宇佐郡河島町の小さな造り酒屋「佐伯酒造」。夏子は、兄康男の病気を聞いて東京から2年ぶりにこの故郷に帰ってきた。家族らとの再会を喜ぶ夏子だが、同時に兄の病気がガンであることを知りショックを受ける。

兄の身を案じつつ東京に返った夏子は、上司の原田から大手酒造メーカー金寿の広告作成に起用される。苦心しながらも、無事第一弾の広告を作り終えるが、そこで兄の死去を知らされる。

葬儀を終え、再び東京に戻り第二弾の広告に取り掛かるが、事実とは違うことを書くことに抵抗を覚えた夏子は、原田とともにその事実を金寿の専務に伝え激昂を買う。

金寿の部長の理解によって、事なきを得た夏子であったが、その胸には兄の夢であったまぼろしの酒造りへの志を固めていた。会社を辞め、夏子は大きな夢を持って、再び故郷に帰ってきた。

 レビュー

はい、絵は小奇麗でさっぱりしています。写真に絵を埋め込んだりしているのか、田舎の雰囲気がよく伝わってきます。

障子から木漏れる光の表現が柔らかだったり、特に、夜の表現は木の暗さや星の明滅に懐かしさを覚えます。

そして酒!私もお酒は好きです。あまり飲めませんが、味はある程度分かります。

本作は「酒をめぐる情熱と夢」、「辛口の人間ドラマ」と銘されていますので、それぞれテーマを見ていきます。

 夢とドラマ

まず、酒をめぐる情熱と夢というのは、夏子の兄康夫の夢であった「まぼろしの酒」を作ること。康夫は夢半ばで倒れ、夏子はこの意思を継いでいくことになります。

そして、辛口の人間ドラマは夏子を見ると、彼女は酒蔵の娘として大手メーカーと造り酒屋の差異を、一人の若者として仕事に対する思いや夢を追う姿をテーマとしてはらんでいると見えます。

今なら、活躍する女性としての描写もありかなと思うのですが、本作では不思議と女性としての描写というのが少なく、一人の人間として描かれているような気がします。

また、作品全体に、おそらく酒のための米作りが絡んでいることから、自然への対峙というものがそこはかとなく感じられます。

 酒!酒!酒!

やはり何と言っても酒!酒と人は切っても切り離すことができないものです。朝ドラで「まっさん」がやっていますが、これもウィスキー作りをテーマにした人間ドラマですね。

酒造りは、米のデンプンを麹菌によって単糖類に分解し、次いで乳酸菌が作り出す乳酸によって硝酸還元菌等を殺菌します。さらに、硝酸還元菌の減少等によって活発になった酵母がアルコールを創りだすという流れになっています。

この菌類の活動の妙によって、酒の味は変わってくるのです。酒は生き物というのはこの菌類のことであって、このことからも菌類、ひいては酒造りにはどうしたら彼らの活動をうまくしてやれるかという愛情が必要だというのが分かります。

なので本作に出てくる「和醸良酒」という言葉は、菌類の「和」ということを考えたならば、優れた科学者の偉大な言葉と比べ遜色のない本当に素敵な言葉です。

 命の水

そうして生まれた酒というのは、ウィスキーの語源にあるように、また、本作で評された「お日様の色」のようにまさに「命の水」であるのです。

そんな命の水である酒の味は人間にしか分かりません。様々な生物が織り成した生命の結晶ともいえる酒を味わい、酔うことができるのは人間の幸せといえます。

だからこそ、酒と人というテーマは、人を魅了して了まないのかもしれません。

かつてドラマ化されてたらしいですけれど、今、朝ドラでやり始めたら毎日見るので是非!