凡典堂

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いかりの駅

2015年1月6日 更新

第70回小学館新人コミック大賞受賞作。海に浮かぶ甲板船。ここはかつて海上鉄道のルートとして賑わった駅。今はすっかり寂れてしまっている。海夫はそこで30年駅守をしている。今日もなにもない一日。…ではないようで、今日は一人の少女がいる。

作品について

  作  者:藤田アカネ

  掲  載:小学館(週刊ビッグコミックスピリッツ)平成24年7月16日号

レビュー

年末に雑誌や本の整理をしていたら出てきていた。すっかり忘れていた。

当時、コンビニで立ち読みをしていた時、何気なく手に取ったスピリッツにこの漫画が載っていた。全く意図せず、気になって読んでみると衝撃を受けた。そのままレジに向かった。

連載作品でもなく、これを逃したらもう見ることができないと思い、それで急いで買いましたが、今調べてみたら小学館のサイトで見ることができるようです。

何をそこまでと思うかもしれないが、一見の価値はあるので一読を。

特筆すべきはその画力であって、文家がその文章の中に匂い立つ花の香りや、宙を舞う蝶、縦横無尽の風の動き、そして煌々と照る月を描きだすように、この漫画は「画」に作品の良さが出ています。

ではその画は一体何を描き出しているのか言うと、講評にも書かれているとおり、物語の良さや心理描写というよりは、どうも「詩」的な美しさにあるように思います。

誰も訪れることのない甲板だけの駅に現れた少女と海夫のやり取りから、彼の思いや過去が次第に明らかになっていきます。

そして、船をつなぎ、彼をつなぐ重い"いかり"を断ち切るに至るまでの流れは昂揚を覚えるくらいの感動があります。

作者は、この作品以降活動されていないのか、素晴らしい作品でしたので、今後活躍されることをお祈りします。

リンク 第70回小学館新人コミック大賞受賞作